本書は様々なモチベーション・マネジメントの理論を紹介しながらモチベーションについて語られている本です。
本書を読み実践すればモチベーションのコントロールができ、苦手なことや乗り気でないことでも楽しく自らチャレンジできるようになるでしょう。
Contents
没頭(フロー)できるものとできないものの違い
フローを提唱したミハイチクセントミハイ教授によると、多くの人が遊びのように仕事をすることは可能です。ではどうすればフローに入ることができるのか?それは発見、探索、問題解決、挑戦などの要素があることです。
特に大切なのはスキルと行為のバランスです。これはエクストリームスポーツのほうでも解説に出てきましたがスキル+4%程度行為がバランスが良いとされています。このあたりは個人差ありますから自分にとって退屈でもなく不満でもない領域をチャレンジしながら見つけていくしかないでしょう。

内発的モチベーションと外発的モチベーションの関係
モチベーションには外発的モチベーションと内発的モチベーションがあります。そしてそれらの関係は内発的>外発的というようになります。これは何となく皆さんも感覚として理解できるでしょう。
では内発的モチベーションを高める要因とは何か?それは以下の3つになります。
・自律性:自分でコントロールできる
・有能性:十分な能力がある、理想の自分になれる
・関係性:人と一緒にやる
外発的モチベーションは報酬や評価、叱責などが該当します。
外発的モチベーションも併せるとよりよくなるのでは?という考えにもなりそうですが、そこには注意が必要です。外発的モチベーションとなる報酬を追加してしまうと内発的モチベーションを阻害するアンダーマイニング効果が出ることがあるからです。もともとは好きでやっていたのにいつの間にかお金のためにやっているというように。。。好きなこを仕事にはしない方がいいということはこのアンダーマイニング効果を避けるように進言したものでしょう。
じゃあ他人をマネジメントするには外発的報酬ができないのか?どうすればいいのか?ということになります。その場合は、コントロールする目的ではなく、あくまで行為に対するフィードバックということをマネジメントする人へ理解される必要があります。アメとムチのように報酬によって釣りあげてコントロールされると感じるだけでアンダーマイニングが出てきてしまうということになります。
個人的にはすごく理解できる話ですね。相手の思うつぼだと感じると自分にいくら利益があったとしても合意できないのは、自分の性格が”あまのじゃく”だったからと思っていました。しかし、これは人間としての正常な反応だったんですね。
モチベーションの上がる評価と行為の選び方
人はどのようなときに努力しようと思うのか?ということについて2つの理論を紹介しています。
公正理論:Output/Input(自分)=Output/Input(他人)
ここでいうInputは努力やスキル、業績のことでOutputは金銭や評価のことになります。
これは人はどのようなときに公平感を感じて努力をするか?という話です。当たり前ですが努力量に応じた評価が他人と同じの場合に公平だと感じることができ、頑張れば評価されるというモチベーションになります。
では、以下の場合はどうなるでしょうか?
Output/Input(自分)<Output/Input(他人)
これは自分のほうが努力して結果を出しているが、他人は業績がそこまでよくないのに同じ評価もしくはそれ以上の評価がされているというパターンです。この場合、公正(イコール)にするために自分のInputを下げてしまもうとしてしまうということです。
期待理論:M(モチベ)=E(主観的価値)×P(確率)
期待理論とは努力の結果として得られる主観的価値とその確率によってモチベーションが決まるという理論になります。
例えば何かのくじを引く場合、Aは自分が欲しい家電、Bはあったら便利そうな掃除道具だとします。その場合当選する確率を欲しいと思う価値にかけ合わせて高いと思う方を選択してくじを引くということです。それはランチに何を食べるか?やどこへ旅行へ行くか?など日常の選択の場合に使われているのです。
「自分はそこまで考えてない」と思われるかもしれませんが、人はみな無意識に行っているのですね。この理論を当てはめて何をすることが一番モチベーションが上がるか?ということを考えることもよいかもしれませんね。例えば語学学習をするのとプログラミングをするのはどちらにしようかと悩んでいるときとか。
モチベーションを上げるには競争は必要?
ライバルがいたからこそ頑張れたということをよく耳にしますが、それは本当なのでしょうか?
ヘルムライク教授の研究結果によると以下の関係性が成り立つようです。
興味が低い対象では競争意識が高いほうが成績がいい
興味が高い対象では競争意識が低い方が成績がいい
この結果の理由については仮説でしかありませんが、競争に神経を使って対象へ集中する力が弱まったのではないかということです。そう考えるとフローや没頭に入るには競争しない方がいいということですね。ただ、やらないといけないことなどは競争を有効に活用することができるというのは覚えておくといいでしょう。
対象によって競争をうまく利用していくことが一番望ましいということです。
モチベーションが向上する要因と低下する要因
モチベーションが上がる要因と下がる要因は同じなのか?ということですがこれは異なるということが分かっています。これを2要因理論としてハーズバーグ教授が提唱しています。
満足と不満足は常に同時に存在しており、一直線上にあるわけではないということです。
さらに満足する要因は内発的モチベーションとなるようなものである傾向が強く、不満足になる要因は外発的モチベーションになる要因が多いということもわかりました。
たしかに考えてみるとこのブログを書くということも自分自身の成長ということを重きにしていますが、一方でPC開いたりすることが面倒といった不満もありますからね。裏返せば単に環境を変えても内発的モチベーションが上がるわけではないということか。
やる気が出ないときどうすればいいの?
これまでの理論を参考にしてみたけど、それでもやるきがでない。。。どうしたらいいの?ということですね。
まず無気力になる要因についてですが、自己コントロール感を失ってしまうことが大きな要因になります。「学習性無力感」で有名な研究として、犬に電流を流し続けると、止めるボタンがあると抵抗すし続けるが、ボタンがないと無抵抗になってしまうというやつですね。
もしマネージャーや親であれば、なんでもやってあげるということをやめてあげてください。これは自己コントロール感を失ってしまうからです。失敗するかもしれないけど見守ることが大切です。
次に無気力を回避する方法ですが、失敗したときの原因を考える。その際に自己コントロール可能な要因を原因と考えることです。才能がないとか向いてないといったコントロール不可なことを原因と考えると、それはコントロールできないことが原因でどうしようもないという思考になってしまいます。
それでも無気力になってしまったら?
学習の目標や成果が分かりやすいようにフィードバックを与えることが大切です。これは内発的モチベーションである成長や有能感を感じられるからです。どれくらいで無気力から脱出できるかは人によりますし時間はかかるでしょう。焦らずに少しづつ前に進んでいるという感覚を持てるように努めることが重要です。
最後に
やっぱり大切なのはコントロール感、挑戦する対象とスキルのバランスなんですね。
これまで苦手だと思い込んでいたものは挑戦する対象の難易度が高すぎるということが問題だったのかなと感じます。その結果コントロール感もなくなって挫折というように。
そう考えると、この本でモチベーションをコントロールする方法を学び、実践できればどんなことでも遊びのように楽しめるのではないかと思います。