【書評】残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

世の中には「やればできる」という自己啓発の本やセミナーは山ほどあります。

しかし残念ながら努力でどうにもならないことが多い。なぜなら知能や性格は遺伝による運命的なものであり、努力ではどうにもならないのだ。

ではどうすればこの資本主義社会で生き残ることができるのか?

そのキーワードが”伽藍を捨ててバザールに向かえ”、”恐竜の尻尾の中に頭を探せ”というものだ。

人の能力は向上するのか?

残念ながらほとんど人の能力は努力では向上しないというのが答えだ。70%は遺伝で決まっており、努力できるか?といったことも遺伝で決まってしまっている。(詳細は本書や進化心理学の本を読んでほしい)

ではなぜ「努力すれば報われる」的な自己啓発が流行っているのか?

それは能力主義というのが差別のない平等な世界だからだ。有名人が遺伝で能力が決まるなんてことを言えば政治的問題として取り上げられるだろう。しかし、平等を掲げている社会でも評価が必要であり、その評価によって給料などの優劣がつけられる。

そこで”能力は努力によって無限に成長できる”という能力主義のイデオロギーが生まれたのだ。

自分を変えられるのか?

では自分を変えられるということはできるのだろうか?という質問も答えはNoだと筆者は言う。これも進化心理学をベースにした考え方で、人間は生得的な感覚を持っているからだ。例えば、仲間はずれになると恐怖を覚えるし、魅力的な女性を奪われると嫉妬する。これは人間が生きていくうえで必要な能力だったからだ。

世の中にいじめが原因で自殺する子供たちが多いが、これは生存戦略として仲間から外れることが死を意味するから。狩猟採集時代にコミュニティから外れてしまえば狩りもうまくいかずに野垂れ死ぬ運命になることは想像つくだろう。特に子供は学校というコミュニティにしか存在しないため、その中で生きられない=死になってしまうのだ。

こういった感情やバイアスというのは人間に必要な感情として遺伝子に組み込まれており、目まぐるしく変化する現代には追い付いていないのだ。

幸福になれるか?

ダーウィンの思想によると、僕たちは遺伝子を残すようにプログラムされている。しかし、僕たち個人での目的は幸せになることだ。つまり幸せになることを目的として生きるが、幸せになるようにデザインされているわけではないということになる。

自由と平等という思想は近代では当たり前の考えであり、そうでない考えは批判されることが多い。しかし狩猟採集時代の遺伝子は階級社会を受け入れるようにデザインされている。なぜならそれが良い遺伝子を残すための戦略だからだ。

残念ながら人間というものは不幸になるようにデザインされている。

では、快楽を求めることは幸せではないだろうか?我々は遺伝子を残すために快楽などの感情を利用して生き残る行動をしてきた。そのため、遺伝子を残すための行為(直接、間接含む)には快楽を伴うようになっている。

しかし、快楽を求めることが幸福とは言わないのは皆わかるだろう。ドラッグなどの依存症やジャンクフードをひたすら食べることを幸福とは言う人がいるだろうか?つまり快楽だけをひたすら求め続けることは幸せとは言わない。

次にお金はどうだろうか?確かにある一定の金額までは幸福度は増していくが、それ以上の額に達すると限界効用の逓減が起き、幸福度は上がらなくなる。一杯目のビールと二杯目のビールのおいしさが同じでないように。

最後に評判はどうだろうか?これは生き残るうえで大切なもので評判が落ちると群れから外されてしまい遺伝子が途絶えてしまう未来が見える。人間は社会的生物だからだ。SNSが流行する理由の一つに認欲求というものが刺激されることがあるだろう。

今やインターネット空間ではたくさんのコミュニティが存在し、評判によって市場が形成されている。そういったコミュニティではポジティブな評判が価値として積みあがっていく。ネガティブな評判は匿名でもあり、かつアカウントを作り直せばリセットされるのであまり価値がない。

一方でリアルなコミュニティというのはネガティブ評判が少しでもあると退会させられるシビアな環境だ。さきほど話したいじめ問題も同じである。このようなコミュニティでは必要以上に空気を読み人目を気にすることが求められ、うつや自殺を引き起こしてしまう。

我々は幸せを手にするために閉じられた空間(伽藍)から自由な市場(バザール)へ向かう必要があるのだ。

自由な市場はどこにあるのか?

ではその自由な市場のどこで我々は活動すれば幸せになれるのだろうか?

これはロングテールという図から考える。

ロングテール | グロービス学び放題

参照:https://hodai.globis.co.jp/courses/d95bf94e

インターネット空間での市場はこのように売り上げの大半が一部のものに集中している。売り上げの高い一部の商品を恐竜のヘッド、ほかの部分が尻尾に似ているのでロングテールという名がついている。

そしてこのロングテールというのはフラクタルな構造になっていることがポイントである。つまり、テールの部分を拡大してみると、さらにそこにはロングテールの形が形成されているのだ。

我々が幸福になるには、このニッチな市場でヘッドとなる評価を得ることが大切なのだ。

閉じられた伽藍を捨てて、自由市場のバザールへ向かおう。そして広いバザールの中でも尻尾の中の頭になることで幸せを見つけることができる。これが狩猟採取時代の体で現代を幸せに生き抜く方法なのだ。